2023年11月28日

地震災害対応マニュアル(案)

雲雀ヶ丘自治会・雲雀ヶ丘自主防災会

Ⅰ.目的

これまでも自主防災訓練を行って来たが、現実的に大きな地震災害が発生した際に、どの様なことが起こり、どの程度の被害が想定されるのかを事前に想定しておかなければ、訓練も絵に描いた餅にしかならない。

特に雲雀ヶ丘自治会内は琵琶湖西岸断層帯に属する膳所断層が町内を走っており、この断層がずれるか否か、またどの程度ずれるのかによって全く被害想定が異なる。

そこで今回、雲雀ヶ丘町内に大きな被害をもたらすと考えられる地震を4つ取り上げ、それぞれについて「地震想定規模」「被害想定」「地震発生後対応」「地震発生前対策」「その他」に分けて、シナリオを準備する。
また必要な食糧及び物資の備蓄や防災資材の整備も、この想定に基づいて行うものとする。

取り上げる地震は下記のものとする。

  • 南海トラフ地震
  • 琵琶湖西岸断層帯(北部)
  • 琵琶湖西岸断層帯(南部)
  • 花折断層帯

それ以外にも滋賀県または大津市で想定されている地震はあるが、それらは上記4つの地震に対する対応で十分対応可能と考える。

なお下記に示したのは大津市が公開しているハザードマップと、国土地理院による活断層マップである。この両者で膳所断層の位置は若干異なるが、この両者を統合した形での被害想定を行うものとする。

また地震の想定被害は平成26年3月に公開された「滋賀県地震被害想定」を参考にしている。

図1:大津市による土砂災害ハザードマップ

図2:国土地理院による活断層マップ


Ⅱ.地震規模想定

上記で挙げた4つのケースについて、地震の想定規模とハザードマップの画面キャプチャを列挙する。なお、大元のハザードマップは「滋賀県防災情報マップ」を利用して作成したものである。

  • 南海トラフ地震
    雲雀ヶ丘自治会内での震度等想定:全域で震度6弱

過去の知見に基づく「基本ケース」と、より陸地の被害が大きくなる「陸側ケース」の2種類が想定されている。ここでは「陸側ケース」を前提とした被害とその対策を考える。

  • 琵琶湖西岸断層帯(北部)
    雲雀ヶ丘自治会内での震度等想定:全域で震度6強

北部からの断層破壊を仮定した「ケース1」を前提とした被害とその対策を考える。

  • 琵琶湖西岸断層帯(南部)
    雲雀ヶ丘自治会内での震度等想定:4地区は震度7、それ以外は震度6強

南部からの断層破壊を仮定した「ケース2」を前提とした被害とその対策を考える。

  • 花折断層帯
    雲雀ヶ丘自治会内での震度等想定:全域で震度6強、ただし1地区は震度7に近い揺れ

中部南側からの断層破壊を仮定した「ケース2」と南部からの断層破壊を仮定した「ケース3」の2種類が想定されている。ここではより震度の大きい「ケース2」を前提とした被害とその対策を考える。


Ⅲ.被害想定

続いて、各地震発生時における被害想定を行う。ただし、これは過去の経験などに基づく最悪のシナリオであり、必ずこうなるものでは無いという点に注意が必要である。

  • 南海トラフ巨大地震

震度6弱の揺れにさらされることから、土砂崩れが発生する。
また、膳所断層に沿って地割れが発生し、土中の水道管およびガス管が断裂する。

全損家屋は出ないと考えられるが、膳所断層に近い家屋で外壁にヒビが入るなどの一部損壊が出る可能性がある。

電気については電柱の倒壊はないと考えられるが、膳所断層が関西電力送配電膳所変電所の敷地内を横切っているため、設備点検等の名目で最大24時間程度の停電の可能性がある。なお地震発生直後の停電率は「滋賀県地震被害想定」によると88%である。

最後に火災であるが、もっとも被害の多い冬の夕方に発生した場合、県全域で1820棟となっている。初期消火に失敗した場合でも、自治会内で消火活動にあたることができれば被害を最小限に食い止められる可能性がある。また、大津南消防署や消防団による消火活動に期待ができる。

  • 琵琶湖西岸断層帯(北部)

北部からの断層破壊であるため、自治会内に存在する膳所断層が断層破壊を起こす可能性は低いと考えられる。
それでも震度6強の揺れにさらされることから、土砂崩れが発生する。

また、膳所断層に沿って地割れまたは最大5cm程度の上下方向のずれが発生し、土中の水道管およびガス管が断裂する。この復旧には数週間かかると考えられる。

全損家屋は出ないと考えられるが、膳所断層に近い家屋で外壁にヒビが入るなどの一部損壊から、最悪の場合は半壊家屋が出る可能性がある。

電気については一部の電柱が倒壊する可能性があり、一部地域で数日間~数週間の停電の恐れがある。またそれ以外の地域でも膳所断層が関西電力送配電膳所変電所の敷地内を横切っているため、設備点検等の名目で最大24時間程度の停電の可能性がある。なお地震発生直後の停電率は「滋賀県地震被害想定」によると58%である。

最後に火災であるが、もっとも被害の多い冬の夕方に発生した場合、県全域で2731棟となっている。初期消火に失敗した場合でも、自治会内で消火活動にあたることができれば被害を最小限に食い止められる可能性がある。また、大津南消防署や消防団による消火活動に期待ができる。

  • 琵琶湖西岸断層帯(南部)

南部からの断層破壊を想定した場合、自治会内に存在する膳所断層が断層破壊を起こしたと想定すべきである。
そのため震度7または6強の揺れにさらされることから、土砂崩れが発生する。

また、膳所断層に沿って最大5m程度の上下方向のずれが発生し、道路が寸断されて行き来が出来なくなる。ずれた面の斜度は35~40度と想定されている。

同時に土中の水道管およびガス管が断裂する。暫定的な復旧は数ヶ月で可能になると考えられるが、完全復旧には半年~最大1年程度かかる可能性がある。

膳所断層に隣接する家屋は全壊または半壊し、2地区を中心に自宅退避が不可能な自治会員が多数出ると想定される。

電気については膳所断層をまたぐ電柱が倒壊し、数週間~1ヶ月程度の停電の恐れがある。また膳所断層が関西電力送配電膳所変電所の敷地内を横切っているため、ここが復旧するまでの数ヶ月、電力供給が不安定になる可能性がある。なお地震発生直後の停電率は「滋賀県地震被害想定」によると63%である。

最後に火災であるが、もっとも被害の多い冬の夕方に発生した場合、県全域で3818棟となっている。初期消火に失敗した場合、水がどこまで使えるか不明なため、延焼を食い止められない可能性がある。また道路が膳所断層によって寸断されているため、大津南消防署や消防団による消火活動には期待できない。

  • 花折断層帯

震度6強(一部震度7)の揺れにさらされることから、土砂崩れが発生する。
また、膳所断層に沿って地割れまたは最大5cm程度の上下方向のずれが発生し、土中の水道管およびガス管が断裂する。この復旧には数週間かかると考えられる。

全損家屋は出ないと考えられるが、膳所断層に近い家屋で外壁にヒビが入るなどの一部損壊から、最悪の場合は半壊家屋が出る可能性がある。

電気については一部の電柱が倒壊する可能性があり、一部地域で数日間~数週間の停電の恐れがある。またそれ以外の地域でも膳所断層が関西電力送配電膳所変電所の敷地内を横切っているため、設備点検等の名目で最大24時間程度の停電の可能性がある。なお地震発生直後の停電率は「滋賀県地震被害想定」によると47%である。

最後に火災であるが、もっとも被害の多い冬の夕方に発生した場合、県全域で1655棟となっている。初期消火に失敗した場合でも、自治会内で消火活動にあたることができれば被害を最小限に食い止められる可能性がある。また、大津南消防署や消防団による消火活動に期待ができる。


Ⅳ.地震発生後対応

地震が発生した後に自治会として可能な対応をケースごとに想定する。

  • 南海トラフ

家屋倒壊などの被害は少ないと考えられるが、自治会館に避難してくる会員が発生すると考えられる。ただし水道やガスが止まる可能性もあるため、電気のみで避難所の運営が可能な様に対策をする必要がある。そのため、冷蔵庫や湯沸かしポット、エアコンの動作確認と確実な稼働を前提とする必要がある。

一方、トイレは利用できなくなる可能性があるため、簡易トイレを用意しておく必要がある。

また飲料水や食糧については、西日本全域が被害域となっているため、長期間にわたって物流が混乱し、不足する可能性がある。備蓄は多いに越したことはないが、限度があると考えられる。

とはいえ被害想定は他のケースと比較すると大きくないため、滋賀県や大津市からの支援を受けられるまでの期間だけを何とかすれば良い。

病人やけが人についても、大津市民病院、滋賀病院をはじめとして大きな病院の数は充実しているため、特に問題なく入院は可能だと考える。

  • 琵琶湖西岸断層帯(北部)

家屋倒壊などの被害は比較的少ないと考えられるが、自治会館に避難してくる会員が発生すると考えるべきだ。ただし水道やガスが止まるため、電気のみで避難所の運営が可能な様に対策をする必要がある。そのため、冷蔵庫や湯沸かしポット、エアコンの動作確認と確実な稼働を前提とする必要がある。

一方、トイレは利用できなくなるため、簡易トイレを用意しておく必要がある。

また飲料水については大津市からの給水車、食糧については京都方面や名古屋方面から名神高速道路等を経由した物流によって支えられるため、3日間程度の備蓄があれば乗り切れると考えられる。

病人やけが人についても、大津市民病院、滋賀病院をはじめとして大きな病院の数は充実しているため、特に問題なく入院は可能だと考える。

  • 琵琶湖西岸断層帯(南部)

家屋倒壊などの被害が甚大であるため、自治会館のみでは避難所を賄うことは困難である。さらに水道やガス、電気が止まるため、発電機による電気のみで避難所の運営を行う必要がある。とはいえ、冷蔵庫や湯沸かしポットまではどうにかなるとしても、エアコンの作動は不可能だと考えるべきである。それでも長期間電源を確保するためには、通常の発電機以外に、ソーラー発電機を用意しておく必要がある。また蓄電池もできるかぎり備えた方が良い。

トイレも利用できなくなるため、簡易トイレを用意しておく必要がある。

また飲料水や食糧については、大津市が大きな被害を受けているため、市からの支援は当面期待できないと考えるべきである。また国道1号線、名神高速道路などが断層によって分断されているため、長期間にわたって物流が混乱し、不足する。備蓄は多いに越したことはないが、限度があると考えられる。

病人やけが人については、膳所断層による道路の分断により、断層の西側では大津市民病院、滋賀病院、断層の東側では琵琶湖中央リハビリテーション病院を搬送先とする必要がある。断層の西側に比べて東側では大きな病院の数は少なく、入院可能な数は限られる可能性が高い。

ただし断層による垂直変動量が不明なため、大きく3つに分けて対策を考える。

1)~0.3m(30cm)

板などを使って斜路を形成し、車椅子や車両による行き来が可能なレベルとして設定する。なお、傾斜は10%で最大3mの距離を必要とする。
この場合、できるだけ自治会は一体として活動し、病人・けが人の搬送なども平時と同様の経路で行う。

2)0.3~1.0m

健康な大人であれば行き来が可能なレベルとして設定する。
この場合、階段に相当するものを設置することで、断層の西部と東部の行き来が可能となる。

3)1.0~2.5m

健康な大人であっても行き来が危険なレベルとして設定する。
この場合、どうしても緊急的に行き来が必要または、物資のやりとりが必要な場合にのみ何らかの方法で相互の交流を行う。ただし階段の設置は余震等による危険があるため、行わない。

3)2.5m~

健康な大人であっても行き来が危険なレベルとして設定する。
この場合、自治会は断層によって西部と東部に分断されるものとし、それぞれの場所に責任者を立て、対策を行うこととする。

  • 花折断層帯

家屋倒壊などの被害は比較的少ないと考えられるが、自治会館に避難してくる会員が発生すると考えるべきだ。ただし水道やガスが止まるため、電気のみで避難所の運営が可能な様に対策をする必要がある。そのため、冷蔵庫や湯沸かしポット、エアコンの動作確認と確実な稼働を前提とする必要がある。

一方、トイレは利用できなくなるため、簡易トイレを用意しておく必要がある。

また飲料水については大津市からの給水車、食糧については名古屋方面から名神高速道路等を経由した物流のみになるため少し時間がかかる可能性がある。そのため、最大1週間程度の備蓄があれば乗り切れると考えられる。

病人やけが人についても、大津市民病院、滋賀病院をはじめとして大きな病院の数は充実しているため、特に問題なく入院は可能だと考える。


Ⅴ.地震発生前対策

上記のⅣをベースに、防災品としてどのようなものを準備するべきかを考える。

基本的に「③琵琶湖西岸断層帯(南部)」は被害が大きすぎ、自治会単位での対策は困難であると考える。

そこで「南海トラフ地震」「琵琶湖西岸断層帯(北部)」「花折断層帯」は同じ様な被害想定になるため、これをベースに考える。
その際、一旦、避難世帯を20世帯程度と想定。1世帯あたりの平均人数を3名で、60人分を想定する。

  • 食糧備蓄

60人に向けて3日分または10食分を備蓄する。

水(2リットルボトル):60人×3日=180本(30ケース→余裕を見て50ケース?)
食糧:60人×10食=600食

  • 防災用品

避難世帯60人分のものと、全自治会員向けのものとに分けて設定する。

避難世帯向け
毛布:60人分
電源:1日程度何とかできるだけの発電機用ガスボンベまたは太陽電池パネル等

全自治会員向け
簡易トイレ(袋):600人で最大30日分を想定する。

  • 耐震診断・地震保険

2000年以前に建築された家屋を対象とした耐震診断を積極的に進めるべきである。もし自治体からの補助金や助成金が出るのであれば、積極的に活用するよう対象世帯に呼びかけを行う。

また地震保険への加入も勧めておくべきである。火災保険は加入している家屋が多いと考えられるが、地震によって発生した火災に対しては保険対象とはならない。必ず地震保険への加入をしておいた方が安全である旨を周知していく。


Ⅵ.その他

地震については上記の通り火災の発生がセットで考えられる。そのため、普段からの防火訓練など、火災対策の訓練や備えが必要となる。

また、膳所断層による自治会の東西分断を想定し、事前に隣接自治会である膳所学区の桜馬場自治会との連携を進めておいた方が良い。
また断層の東側からは茶臼山公園への避難が不可能になるため、一時避難場所は膳所小学校を想定し、そこまで辿り着くのが難しい場合はフレンドマート膳所店の駐車場を仮の避難場所とできるよう、交渉しておく必要もある。

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